2025年3月「THE NODOKA」からはじめてのお香「THE INCENSE」が誕生します。「THE INCENSE」の最大の特徴は、製造工程で廃棄される茶葉を原材料にしていること。この循環型のアプローチは、2018年の設立当初から時間をかけて温めてきた構想です。また、香りのイメージには、茶畑ののどかな“空気感”が表現されています。今回は、この特別なお香がどのように誕生したのか、その制作秘話をお届けします。
自然の豊かさを香りで感じる — THE INCENSEの物語
2018年、THE NODOKAの設立当初から、お香をつくる構想を抱いていました。そう話すのは、THE NODOKAの代表、洪秀日(以下、洪)です。
静岡県の茶畑や工場を訪れるたびに、その土地ならではの香りを感じます。例えば、海外の空港に降り立った瞬間、その国の香りが強く印象に残るように、香りは記憶として刻まれ、やがて懐かしさや感情へと変わっていく──。「“嗅覚”がもたらす感覚には、“味覚”では得られない特別な魅力があると感じています」と、洪は話します。
「都内で飲むお茶と、茶畑で農家さんたちと飲むお茶は、同じものでもその場の空気や雰囲気、誰と一緒に飲むかによって、不思議と味わいが異なります」
どこで飲んでいても、茶畑でお茶を飲んでいるような体験を届けたいという想いが、「THE INCENSE」をつくる大きなきっかけとなりました。
洪自身、普段からお香を愛用していたこともあり、「THE INCENSE」が誕生したことは自然な流れだったようです。
お茶屋であるTHE NODOKAがつくる「お香」
THE NODOKAの最大の特徴は、茶葉そのものを余すことなく味わえる点にあります。しかし、製造工程ではどうしても茶葉の切れ端が生じ、年間で数トンもの茶葉が廃棄されています。洪は、これらの切れ端を、循環の仕組みをつくる手段のひとつとして、お香の原材料に利用することを考えました。
お香をつくるにあたり、パートナーとして選んだのは、自身も愛用している『東京香堂』。「“自然と共存する”という『東京香堂』のコンセプトが、私たちの目指す世界観に合っていたことが一番の理由です」と、洪。
農家の皆さんが大切に育てた茶葉が、一本のお香に新たな形で息づくことになるのです。
届けたいのは茶畑の“空気感”でした
ここからは、洪とともに『東京香堂』の代表で調香師のペレス千夏子さん(以下、ペレスさん)にもお話を伺います。
まずは、ペレスさんに「THE INCENSE」の調香について聞きました。
──初めは「茶葉をベースにしたお香」がテーマで、お茶の香りに近づける調香を考えていました。「お香の原材料として廃棄予定の茶葉を送っていただきましたが、収穫時期や状況によって香りにばらつきがあり、香りの抽出がとても難しかったです。何度も研究と試作を重ねましたが、焚くとスモーキーさが強く出てしまって......」と、ペレスさんは振り返ります。
試作を進めるにあたり、実際に茶畑を2回訪れたペレスさん。この訪問が、香りをつくるイメージを大きく変えるきっかけとなりました。
「その日は澄み渡る青空の下、わずかに雲が漂う爽やかな日でした。目の前に広がる茶畑は美しく、朝露をまとった茶葉はまるで水に包まれているように輝いていました。その瞬間、お茶の香りそのものではなく、この茶畑が醸し出すのどかな空気感をお香で伝えたいと感じました」
そして、「長い間大切に受け継がれてきた茶畑の存在を、お香を通じて表現したい」とも。
さらに、決め手となったのはお茶の工場の香りでした。「工場内はお茶の香りが隅々まで広がり、そこにほんのりと甘さが漂っていました。この包み込むような甘さを香りのアクセントとして取り入れることにしました」とペレスさんは話します。
のどかな茶畑の空気感を表現した「THE INCENSE」
出来上がった「THE INCENSE」は、まさに、その茶畑の空気をまとったかのような仕上がりです。
洪は完成した「THE INCENSE」を手に取り「香りに正解がないからこそ、表現の難しさがある。この香りは、自分がすごく好きな香りでした」と話します。
香りは控えめでありながら、確かな存在感を放ち、その余韻は深く心に響きます。この感覚は、「THE NODOKA」のお茶づくりにも通じるものがあります。お茶の持つ風味や香りが素材の本質を引き出すように、同じプロセスが「THE INCENSE」にも込められているのです。
香りが紡ぐ新たな物語
「THE INCENSE」にはあえて名前をつけていません。香りのイメージは、茶畑の「のどかな香り」とだけ。
名前を持たないことで、その人の感情に余白を残しました。香りの感じ方は人それぞれ、自由な解釈で。香りは、時間を共にしている仲間や自分だけの物語に寄り添います。
まずは、お茶を飲みお香を楽しみながら、「のどか」な茶畑へと旅に出かけてみてください。
これからも「THE NODOKA」は、茶葉から生まれる、特別な体験をお届けします。
商品紹介
THE INCENSE(ザ インセンス) 1,800円(税込1,980円)
のどかな茶畑の空気感を香りに。廃棄茶葉から生まれたお香
のどかな茶畑の空気感と朝露の湿度に、ほのかな甘さを纏わせて。廃棄される茶葉を大切に活かし、心和らぐお香へと仕立てました。
東京香堂
日本の伝統的なお香と西洋の調香技術を融合させたインテリア・アロマ・インセンスブランド。1935年から続く線香屋の3代目であり南フランスのグラースで調香を学んだペレス千夏子と、グラース出身で長年に渡り香りの製作に携わってきたペレスジョフレとのユニットによりスタート。香りを見えないアートと捉え、独自の感性でお香の新たな世界を日々模索し創作に励んでいる。原料は、自然と対話をしながら世界各地で厳選し自ら調達。調香から製品化に至るまで、すべて独自の技法で手がけている。自社の創作活動の他に、アーティストや企業、展示での共作プロジェクトを通して、嗅覚と視覚、味覚などを融合させた独自のアート体験を提供する。